この授業で目指すこと
- 宿題には身につけたいねらいがあり、AIの使い方によって学びになる場合と、学びを手放してしまう場合があることを説明できる。
- 使い方カードを線の上に並べ、意見の違いを「ねらい・説明・正直」の3つの問いで話し合える。
- 先生や学校の決まりを前提に、自分がAIを使うときの約束を言葉にできる。
対象と準備
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 中学校1〜3年。学級活動、道徳、総合的な学習の時間で、長期休みの課題やレポート課題を出す前に実施すると効果的です。 |
| 時間 | 50分(5分単位の配分は下の「50分の進め方」) |
| 準備物 | ワークシート(1人1枚。使い方カードと線を含む)、黒板に「自分の学びになる ←→ 学びを手放す」の線、班ごとにカードを切り取るはさみ(または番号を書きこむだけでも可) |
| 端末 | 不要。 |
| AIサービス | 使いません。 |
50分の進め方
- 導入:宿題は何のため?
「宿題は何のためにある?」と問い、出た答え(練習・覚える・考えを深める・先生が理解を確かめる など)を板書する。
- 個人:線の上に並べる
使い方カードア〜ケを読み、ワークシートの線(自分の学びになる ←→ 学びを手放す)の上に、自分の考えで記号を書きこむ。
- 班:並べ方をくらべる
班で並べ方をくらべ、意見が分かれたカードを1枚選ぶ。「どんな条件なら位置が変わるか」(例:ヒントだけなら、使ったことを書けば)を話し合う。
- 全体:線引きの3つの問い
班の意見を聞きながら、「ねらい」「説明」「正直」の3つの問いに整理する。カードケのように、先生の指示や学校の決まりに反する使い方は、学びになるかどうか以前の問題であることを確認する。
- 約束づくり:わたしのAI宿題の約束
3つの問いを使って、自分がAIを使うときの約束を1〜2文で書き、班で1つ選んで発表する(各班1分)。
- 振り返り
AIを使った宿題で残す記録(使ったサービス・日付・入力した文・使った所)を確認し、振り返りを書く。
使い方カードと話し合いの目安(教師用)
(すべて授業用に作った架空の場面です) 並べ方に正解はありません。下は話し合いを深めるための目安です。
| カード | 位置の目安 | 話し合いのポイント |
|---|---|---|
| ア 答えを写す | 学びを手放す側 | 練習のねらいを自分でやっていない。説明もできない。 |
| イ ヒントだけ | 学びになる側 | 考える部分は自分でしている。使ったことを書けばより明確。 |
| ウ 英作文の指摘 | 学びになる側 | 自分で書いた文をもとに直し、直した所を記録している。文部科学省ガイドラインにも、自分の文章をAIに修正させたものを「たたき台」に推敲する例がある。 |
| エ 感想文をAIに | 学びを手放す側 | AIの出力をほぼそのまま自分の成果物として提出しており、ガイドラインも不適切な例に挙げている。言葉を少し変えても同じ。 |
| オ テーマ案 | 条件によって変わる | 選ぶ・調べるのは自分。ただし最初からAIに頼ると自分の興味から出発しにくい。 |
| カ 教科書と照らす | 学びになる側 | AIの説明を確かめ、違いを見つけること自体が学びになっている。 |
| キ 詩の前にAI | 学びを手放す側 | 感じたことを表すねらいの宿題で、自分の感想より先にAIを使っている。ガイドラインも、感性や独創性を発揮させたい場面や初発の感想を求める場面での安易な利用を不適切な例に挙げている。 |
| ク 練習問題 | 学びになる側 | 問題の正しさは確かめる必要がある。分からない所を先生に聞いているのがよい。 |
| ケ 指示に反する | 線の外 | 学びになるかどうか以前に、約束を破っている。正直さの問題。 |
教師の発問と想定される反応
| 発問 | 想定される反応 | つなぎ方 |
|---|---|---|
| 宿題は何のため? | 成績のため。先生に出すため。練習のため。 | 宿題ごとに身につけたいことがある。そこを自分でやったかが線引きの中心。 |
| イとアは何が違う? | イは自分で解いている。 | 同じAIでも、考える部分をだれがしたかで学びが変わる。 |
| エで言葉を変えれば自分のもの? | 少し変えたから大丈夫。変えても同じ。 | 説明を求められたら答えられるか、で考える。 |
| 先生が許可したら、エもよい? | 許可されたらよい。それでも自分の学びにならない。 | ルールで許されることと、自分の学びになることは別に考える。 |
困ったときの対応
| こんなとき | 対応 |
|---|---|
| 「ばれなければよい」という意見が出る | 否定だけで終わらせず、「その宿題で身につけたいことは身についたか」「説明を求められたら答えられるか」を問い返す。 |
| AIを使ったことを話しにくい雰囲気になる | 個人の経験を言わせず、カードの架空の場面について話す授業だと確認する。 |
| 家でAIを使えない生徒がいる | AIを使うことが前提の授業ではないこと、使わない選択も大切な判断であることを伝える。 |
| 時間が足りない | カードをア・イ・ウ・エ・ケの5枚に絞る。約束づくりは班の代表だけ発表する。 |
評価の観点
| 観点 | おおむね満足 | 十分満足 | 見取る場面 |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | AIの使い方によって、学びになる場合とならない場合があることを説明できる。 | 宿題のねらいと結びつけて、その理由を説明できる。 | ワークシート2 |
| 思考・判断・表現 | カードの位置について理由を書ける。 | 条件を変えると位置が変わることを、3つの問いを使って説明できる。 | ワークシート1・2 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 自分がAIを使うときの約束を書ける。 | 学校の決まりを踏まえ、記録の残し方まで含めた具体的な約束を書ける。 | ワークシート3・振り返り |
AIを使うことに賛成か反対かではなく、理由と条件を考えられたかを見取ります。提出物の評価には宿題・レポートAI利用評価表が使えます。
個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意
- 個人情報:授業の中で、生徒個人のAI利用経験を言わせたり、提出物を例として見せたりしません。家庭でAIを使う場合も、氏名・学校名・写真などは入力しないよう伝えます。
- 著作権:宿題でAIの出力や他人の文章を使う場合は、引用の部分を分け、出典(AIの場合はサービス名・入力した文・日付)を書くよう指導します。
- 年齢条件:家庭での宿題にAIを使うかどうかは、年齢条件と保護者の同意が関わります。生成AIサービスは、利用規約で年齢条件を定めています。たとえばOpenAIの利用規約は、13歳以上(国の定める年齢がそれより高い場合はその年齢)であることを条件とし、18歳未満は保護者などの許可を求めています。Googleアカウントは、日本では13歳未満の場合、保護者がファミリーリンクで作成・管理する仕組みです(いずれも2026-10-01確認)。文部科学省のガイドラインは、年齢制限や保護者の同意の必要性を含め、提供者が定める最新の利用規約を確認・遵守するよう求めています。規約は変わるため、授業や家庭で使う前に最新版を確認してください。
- 事実確認:カードクのように、AIが作った問題や説明にも誤りが含まれることがあるため、教科書や先生に確かめるよう伝えます。
保護者・管理職への説明
宿題でのAI利用は、家庭で起きることが多いため、保護者への説明が特に大切です。「AIを禁止・推奨する授業ではなく、宿題のねらいから使い方を考える授業」であることと、学校・教科の決まりを伝えます。文部科学省ガイドラインも、保護者に対して不適切な利用が行われないよう周知し理解を得ることが必要だとしています。説明資料の例は学校で生成AIを扱う前に、学校の決まりを作るときは校内生成AI利用ルールひな型を参照してください。
根拠と参照資料
文部科学省ガイドラインのBox-5「学習場面において利活用が考えられる例、不適切と考えられる例」とBox-6「課題に関する留意事項について」(生成AIの出力をそのまま自己の成果物として提出することへの指導、口頭で説明する機会、やりとりの過程の添付、ツール名・プロンプト・日付の明記など)をもとに、使い方カードと線引きの問いを作っています。
- 文部科学省:初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0、令和6年12月26日)(2026-10-01確認)
- 文部科学省:学校現場における生成AIの利用について(2026-10-01確認)
- 個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)(2026-10-01確認)
- OpenAI:Terms of Use(利用規約)(2026-10-01確認)
- Google アカウント ヘルプ:Google アカウントの年齢制限(2026-10-01確認)
法律や利用規約の説明は、各資料の記載に沿って要約したものです。個別の事案の判断や最新の条件は、必ず原文と所管の窓口で確認してください。
版と利用条件
教材版:1.0/更新日:2026-10-01/参照資料の確認日:2026-10-01。教材内の投稿・会話・場面・AIの回答例は、すべて授業用に作った架空の事例です。
CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。