このガイドの位置づけ
教員が授業準備や校務で生成AIを使うときの、使い始める前の確認、入力してよい情報の見分け方、出力の確かめ方、仕上げまでの手順をまとめた教員向けガイドです。印刷して手元に置けるチェックリストが付いています。
| 対象 | 小学校・中学校・高等学校の教職員(管理職・情報担当の校内共有にも) |
|---|---|
| 所要時間 | 読了 約15分/校内研修で使う場合 20〜30分 |
| 端末・AIサービス | 学校・設置者が承認したサービスとアカウントのみ |
| 準備物 | 教育委員会・学校の教育情報セキュリティポリシーと生成AIの利用方針、利用するサービスの最新の利用規約、チェックリスト |
前提:文部科学省のガイドラインは、教職員が生成AIの仕組みや特徴を理解し、出力の適切性を判断できる範囲で校務に利活用することを有用としつつ、教育委員会の方針に基づくこと、私用アカウントや許可を得ていない私用端末を使わないこと、成績情報などの重要性の高い情報を入力しないことを示しています。このガイドより、所属する教育委員会・学校の方針を優先してください。
ねらい
- 生成AIを使ってよい環境かどうかを、使い始める前に確かめられる。
- 入力してよい情報・加工すれば検討できる情報・入力しない情報を区別できる。
- 出力の事実・偏り・著作権・表現を確かめ、自分の責任で仕上げる手順を身につける。
入力してよい情報の見分け方
| 区分 | 例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 入力しない | 児童生徒・保護者・教職員の氏名、住所、連絡先、写真、出席番号と結びついた情報/成績、評価、所見の下書きに使う個別の記録/健康、障害、家庭の状況、生徒指導・いじめ等の事案の内容/入試問題や人事など未公表の校務情報/ID、パスワード、認証コード/許諾のない他者の著作物の全文 | 漏えい時の影響が大きい情報です。個別契約等で安全対策が確認された環境で、学校の方針が明示的に認めている場合を除き、入力しません。 |
| 加工すれば検討できる | 名前を記号に置き換えた架空の場面/学級全体の傾向を一般化した説明/自分で書いた文章の下書き | 名前を消しても、学級の規模、出来事、日付の組み合わせで個人が特定できることがあります。特定につながる要素を減らし、それでも迷う場合は入力しません。 |
| 入力してよい | 学習指導要領や教科書の単元名、一般的な指導の流れ/公開されている行事の一般的な情報/自分で作った架空の例文 | 公開情報でも、利用規約や学校の方針に反しない範囲で使います。出典の確認は別に必要です。 |
個人情報には、氏名だけでなく、他の情報と照合すると特定の個人を識別できるものも含まれ、インターネット上で公開されている情報も該当し得ます(文部科学省ガイドライン Ver.2.0 の注記による)。
使うときの6つの手順
- 目的を一文で決める「何を」「だれのために」「どこまで」AIに手伝ってもらうかを決めます。例:「小5理科の振り返り問題のたたき台を5問作る。採用するかは自分が判断する。」
- 環境を確かめる学校が承認したサービス・アカウント・端末か、入力内容が学習に使われる設定になっていないか、生成物の利用条件はどうなっているかを確認します。
- 入力を点検する送信する前に、上の表の「入力しない」情報が含まれていないかを読み返します。資料を貼り付けるときは特に注意します。
- 依頼を具体的に書く対象学年、目的、形式、分量、条件(「確かでないことは要確認と書いて」など)を書きます。一度で求める出力が得られるとは考えず、やりとりを重ねます。
- 出力を確かめる事実・数字・日付・引用を一次資料で確認し、偏った表現や差別的な表現がないか、既存の作品に似すぎていないか、学年に合った言葉かを見ます。
- 自分の責任で仕上げる出力は参考の一つです。最後は自分で判断し、推敲・修正して完成させます。学校の方針に応じて、AIを使ったことを記録・明記します。
場面別の使い方
| 場面 | 使い方の例 | 気を付けること |
|---|---|---|
| 授業準備 | 教材や確認テストのたたき台、発問に対する想定反応の洗い出し、ワークシートの構成案 | 答えと解説は必ず自分で検算・確認する。教科書や市販教材の内容を丸ごと入力しない。 |
| 学級・学年だより | 行事の案内文の構成案、言い回しの候補 | 児童生徒の名前やエピソードを入力しない。学級通信は授業の過程での利用に当たらないため、既存の著作物に似た文章・画像を使わない。 |
| 校内研修・会議 | 研修資料の構成案、一般的な論点の整理 | 未公表の校務情報や個人が分かる会議記録を入力しない。 |
| アンケート作成 | 生活実態調査などの設問案 | 回答データそのものの分析に使う場合は、学校の方針と個人情報の扱いを事前に確認する。 |
| 行事の計画 | 校外学習の行程のたたき台 | 移動時間・施設情報は公式情報で確認する。 |
| 成績・所見・指導記録 | 原則として使わない | 成績情報などの重要性の高い情報は入力しない。評価と個別の記録は教員が書く。 |
授業準備・学校だより・校内研修・アンケート案・行程案の例は、文部科学省ガイドライン Ver.2.0 の「教職員による校務での利活用例」を参考にしています。
依頼文の例
次の例は、個人情報を含まない架空の依頼文です。
あなたは小学校5年の理科を担当する教員の補助です。「流れる水の働き」の学習の振り返りとして、選択式の確認問題を5問作ってください。各問に正答と、なぜその答えになるかの短い説明を付けてください。教科書の文章は引用せず、一般的な内容で作ってください。確かでない内容は「要確認」と書いてください。
出力を受け取ったら、正答と説明を教科書・指導書で確認し、学級の学習の進み具合に合わせて書き直します。
困った場合の対応
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 個人情報を入力してしまった | 入力・共有を止め、何を・いつ・どのサービスに入力したかを記録し、学校の方針に従って管理職・情報セキュリティの担当者へすぐに報告します。履歴の削除などは自己判断せず、指示を受けて行います。 |
| 出力に誤りがあり、すでに配布していた | 誤りの範囲を確認し、訂正を配布・説明します。学年・教科で共有し、同じ使い方をしている人がいないか確かめます。 |
| 出力が既存の作品に似ている | 使用をやめ、自分で作り直します。外部へ公開する文書では特に注意します。 |
| 同僚が私用アカウントで使っている | 個人を責めず、学校の方針と承認された環境を共有します。管理職に運用の確認を依頼します。 |
校内でトラブルとして扱う必要がある場合は、生成AIに関わる校内トラブルの初動対応フローを参照してください。
管理職・情報担当の方へ
- 文部科学省ガイドラインは、学校の管理職が生成AIの運用を把握し、適切な利活用がされているかを適時確認すること、成果を教職員全体で共有することを示しています。
- 承認したサービス、入力禁止情報、報告先を一枚にまとめ、職員室に掲示すると判断が速くなります(チェックリストの記入欄を使えます)。
- 校内ルール全体の検討には校内生成AI利用ルールひな型、サービスの選定にはAIサービス選定チェック表を使えます。
個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意
- 個人情報:生成AIサービスに個人情報を含む入力をする場合は、提供者がその情報を機械学習に使うかどうかなどを十分に確認する必要があります。迷う情報は入力しません。
- 著作権:授業の過程での利用(著作権法第35条)の範囲を超えて、学校のWebサイト、学級通信、PTA活動などで使う場合、既存の著作物と同一・類似のものを使うと著作権侵害となる可能性があります。
- 年齢条件:教員が作った教材を児童生徒に使わせる場合は、サービスの年齢条件と保護者同意の要否を別に確認します。
- 事実確認:数字、日付、法令、制度、人物の発言は、必ず発行元の一次資料で確認します。
根拠と参照資料
- 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(2024年12月26日):「3-1. 教職員が校務で利活用する場面」(2026-10-01確認)
- 文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和7年3月改訂版を掲載)(2026-10-01確認)
- 文部科学省「教育データの利活用に係る留意事項について」(2026-10-01確認)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2026-10-01確認)
- 文化庁「AIと著作権について」(2026-10-01確認)
利用条件と版
CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。教材版:1.0/更新日:2026-10-01/参照資料の確認日:2026-10-01。
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