中学校 / 50分 / 情報モラル

ディープフェイクとSNSでの拡散

本物そっくりの画像・動画・音声は、だれでも作れる時代になりました。見た目で見抜こうとするより先に、「シェアする前の3つの確認」を習慣にします。

導入・解説 15|班活動 15|共有 15|振り返り 5

授業時間
50分
人数
3–4人組
端末
不要
更新日
2026-10-01

この授業で目指すこと

  • ディープフェイク(AIなどで作られた、本物そっくりの偽の画像・動画・音声)はだれでも作れ、見た目だけでは見分けにくいことを説明できる。
  • 投稿を「だれが(発信元)」「いつ・どこの(日時と場所)」「ほかでも(別の確かな情報源)」の3つで確かめ、シェアする/しない/保留するを理由とともに選べる。
  • 本物か偽物かにかかわらず、人を傷つける情報は広げないことと、送ってしまった後にできることを考える。
安全な実施:授業でディープフェイクを作ったり、実在する人物・生徒の写真を加工したりしません。投稿カードはすべて文字だけの架空の事例です。生徒の端末やSNSアカウントは開かせません。

対象と準備

項目内容
対象中学校1〜3年。道徳、社会(公民的分野)、技術・家庭(技術分野)、学級活動などで実施できます。
時間50分(5分単位の配分は下の「50分の進め方」)
準備物投影スライド(投影できない場合は印刷して黒板に掲示)、ワークシート(1人1枚。投稿カードA〜Eを含む)、班ごとに付箋
端末生徒は不要。教師はスライド投影用の機器があれば使います。
AIサービス使いません。実際の生成AIや画像検索の操作は、教師が説明の中で言葉で紹介します。

50分の進め方

  1. 導入:シェアする?しない?

    投稿カードA(堤防の動画)だけを読み上げ、「家族のグループに転送する?」と挙手で聞く。理由は問わず、手を挙げた人数を板書する。

  2. 解説:ディープフェイクとは

    AIなどで本物そっくりの画像・動画・音声が作れること、文字を入れるだけで偽画像を作れるようになっていることを説明する。古い写真や別の場所の映像を「今の出来事」として流す使い回しも、同じように広がると伝える。

  3. 3つの確認を知る

    「だれが(発信元)」「いつ・どこの(日時と場所)」「ほかでも(別の確かな情報源)」を示す。見た目の不自然さ探しより、この3つのほうが確実に使えることを確認する。

  4. 班活動:投稿カードを判定する

    班で投稿カードA〜Eを読み、3つの確認で分かること・分からないことをワークシートに書く。最後に「シェアする/シェアしない/保留」を選び、理由を一文で書く。

  5. 共有:判定をくらべる

    班ごとに1枚ずつ発表し、判定が分かれたカードを全体で検討する。カードDでは「本物かどうか」より前に「人を傷つけるか」を考える必要があることを確かめる。

  6. もし送ってしまったら

    1人が5人に転送し、その5人がまた5人に…と続くと、3回目で125人に届く計算例を示す。訂正は元の投稿ほど広がりにくいことを確認し、送ってしまった後にできること(送った相手に訂正を伝える、自分の投稿を消す、困ったら大人に相談する)を挙げる。

  7. 振り返り:出口チケット

    「シェアする前に、私は___を確かめる。迷ったら___する」を書く。

投稿カードと判定の目安(教師用)

(すべて授業用に作った架空の事例です。人物名・地名・アカウントは実在しません)

カード3つの確認で見えること判定の目安
A 堤防の動画発信元:作られたばかりのアカウント。日時と場所:不明。ほかでも:自治体や気象の公式情報で確かめていない。保留(シェアしない)。避難の判断は自治体・気象の公式情報で行い、転送するなら公式情報のリンクを伝える。
B 配信者のプレゼント動画発信元:本人の公式チャンネルにない。ほかでも:確かめられない。コメントの「もらえた」は根拠にならない。シェアしない。本人になりすました動画で、アプリの導入やログインに誘う詐欺の可能性がある。
C 花火大会の中止発信元:市の公式アカウント。日時:今日の日付。ほかでも:市のホームページと一致。シェアしてよい。ただし公式のお知らせのリンクごと伝える。
D 同級生の画像発信元:送ってきた人も作られた画像だと認めている。シェアしない。本物か偽物かに関係なく、人を傷つける画像は広げない。先生や信頼できる大人に知らせる。
E 駅前の水没写真日時と場所:同じ写真が数年前の別の地域の記事にある。シェアしない。古い写真の使い回し。災害時に起きやすい誤情報の型として扱う。

教師の発問と想定される反応

発問想定される反応つなぎ方
Aを家族に転送したのはなぜ?危ないから早く知らせたい。動画があるから本当だと思った。善意の転送でも、誤情報なら混乱を広げる。急ぐときほど公式情報を確かめる。
見た目で偽物を見分けられる?指の数や影がおかしい所を探す。技術が進むと見た目の手がかりは減る。だれでも使える3つの確認を優先する。
Cはどうしてシェアしてよいと言える?市の公式で、ホームページにも同じ内容がある。発信元と別の情報源の2つがそろうと、確かさが上がる。
Dは本物ならシェアしてよい?本物でもだめ。本人がいやがる。真偽の確認より前に、人権を守る判断がある。
保留とは何もしないこと?放っておくこと。確かめられるまで広げないという、積極的な判断。必要なら公式情報だけを伝える。

困ったときの対応

こんなとき対応
「偽物の見分け方を教えて」と求められる見た目の手がかりは技術の進歩で当てにならなくなることを伝え、発信元・日時と場所・別の情報源の確認に戻す。
実際に画像を加工された経験が語られる全体の場では深追いせず、授業後に個別に話を聞き、学校の相談体制(学級担任、生徒指導、養護教諭など)につなぐ。
「全部保留にすればいい」と考える班があるカードCを例に、確かめられた公式情報はリンクごと伝えてよいことを確認する。
班の話し合いが止まるカードごとに「だれが」から順に一つずつ確かめるよう声をかける。
時間が足りない班活動のカードをA・C・Dの3枚に絞る。B・Eは宿題か次時の導入に回す。

評価の観点

観点おおむね満足十分満足見取る場面
知識・技能ディープフェイクは見た目だけでは見分けにくいことを説明できる。古い写真の使い回しなども含め、誤情報が広がる理由を説明できる。ワークシート1・出口チケット
思考・判断・表現3つの確認のうち1つ以上を根拠に判定を書ける。3つの確認を組み合わせ、分からないことは保留と判断できる。ワークシート2(投稿カードの判定)
主体的に学習に取り組む態度シェアする前に確かめる行動を書ける。送ってしまった後の行動や、人を傷つける情報を広げない判断まで書ける。出口チケット

判定が教師の目安と一致したかではなく、確かめた根拠と判断の理由を見取ります。共通評価ルーブリックも使えます。

個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意

  • 個人情報と肖像:生徒や教職員、実在の人物の写真・名前・アカウントを教材に使いません。生徒自身のSNS画面を見せ合う活動もしません。
  • 著作権:実際のニュース画像や動画を補足に使う場合は、授業の過程での利用(著作権法第35条)の範囲で投影にとどめ、配布資料や学校のWebページには載せません。
  • 年齢条件:この授業では生徒は生成AIを使いません。生成AIサービスは、利用規約で年齢条件を定めています。たとえばOpenAIの利用規約は、13歳以上(国の定める年齢がそれより高い場合はその年齢)であることを条件とし、18歳未満は保護者などの許可を求めています。Googleアカウントは、日本では13歳未満の場合、保護者がファミリーリンクで作成・管理する仕組みです(いずれも2026-10-01確認)。文部科学省のガイドラインは、年齢制限や保護者の同意の必要性を含め、提供者が定める最新の利用規約を確認・遵守するよう求めています。規約は変わるため、授業や家庭で使う前に最新版を確認してください。
  • 事実確認:投稿カードはすべて架空です。実際の出来事を例に加える場合は、授業の直前に教師が公的機関や報道機関の情報で真偽を確かめた、固定の例を使います。

保護者・管理職への説明

「生徒が生成AIやSNSを使う授業ではなく、文字だけの架空の投稿を使って、情報を広げる前に確かめる手順と、人を傷つける情報を広げない判断を学ぶ授業」であることを伝えます。家庭には、出口チケットに書いた「3つの確認」を話題にしてもらうよう依頼できます。説明資料の例は学校で生成AIを扱う前ににあります。

根拠と参照資料

文部科学省ガイドラインが示す「情報発信による他人や社会への影響について考えさせる学習活動」「情報には誤ったものや危険なものがあることを考えさせる学習活動」と、ファクトチェックで複数の方法(情報の発信者、発信された時期、内容、他の情報との比較)を組み合わせる考え方を、授業の軸にしています。

法律や利用規約の説明は、各資料の記載に沿って要約したものです。個別の事案の判断や最新の条件は、必ず原文と所管の窓口で確認してください。

版と利用条件

教材版:1.0/更新日:2026-10-01/参照資料の確認日:2026-10-01。教材内の投稿・会話・場面・AIの回答例は、すべて授業用に作った架空の事例です。

CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。