中学校・高等学校 / 道徳・技術・学級活動 / 50分

その声、本人? AIの声のなりすまし

AIは短い音声から、本人そっくりの声を作れます。家族の声で「お金」「急いで」「秘密に」と言われたとき、どう確かめるかを、架空の場面カード5枚で練習します。

授業時間
50分
対象
中学1年〜高校3年
形態
3〜4人組
端末・AI
使わない
リビングでスマートフォンを耳に当て、少し首をかしげて考えている高校生

この授業でできるようになること

  • AIで短い音声から本人そっくりの声が作れること、声だけでは本人だと確かめられないことを説明できる。
  • 電話やボイスメッセージの「お金」「急いで」「秘密に」の3つの合図に気づき、かけ直す・合言葉・大人に相談のどれで確かめるかを選べる。
  • 家族と決めておきたい「確かめ方」を、ワークシートにまとめられる。

準備

生徒の端末・生成AIサービスは使いません。実際の音声やAIで作った音声も流しません。場面は文字とイラストだけで示します。

授業の流れ(50分)

  1. 0–5分

    導入:この電話、どうする?スライド1・2

    場面カードAの会話を読み上げ、「声がお母さんそっくりだったら、お金を持って駅に行く?」と聞く。行く/行かない/まようを挙手で数え、人数だけ板書する。

    家族の声で困っていると言われたら、助けたくなりますよね。では、本当にお母さんだと、何で分かりますか?

  2. 5–15分

    声はまねできる・3つの合図と3つの確かめ方スライド3〜6

    AIが短い音声から声をまねできること、昔から「風邪で声が変わった」と言ってだます手口があることを伝え、声は本人の証拠にならないと確認する。「お金」「急いで」「秘密に」の3つの合図と、かけ直す・合言葉・大人に相談の3つの確かめ方を示す。

    声を聞き分けるより、合図に気づいて、自分から確かめにいく方が確かです。

  3. 15–30分

    班活動:場面カードを確かめるスライド7・8

    3〜4人組で場面カードA〜Eを読み、ワークシート1に合図(お金・急いで・秘密に・なし)を丸で囲み、どう確かめるかを書く。1枚3分が目安。

    合図がいくつあるか数えてから、確かめ方を選びましょう。

  4. 30–38分

    共有:合図がないカードは?スライド9

    班ごとに1枚ずつ発表する。合図のないカードDは、ふだんどおりでよいことを確かめる。カードEで、お金でなく写真や住所を求める場合も同じ合図だと確認する。

    全部の電話を疑う必要はありません。合図があったら、確かめる。

  5. 38–45分

    家族の合言葉と相談先スライド10・11

    合言葉の決め方(家族しか知らない・SNSにのっていない・ときどき変える)を示す。合言葉そのものは、ワークシートにも書かず、発表もしないと伝える。困ったときの相談先を確認する。

  6. 45–50分

    出口チケットスライド12

    「家族の声で『お金・急いで・秘密に』と言われたら、わたしは___する」をワークシート3に書き、2〜3人が発表する。

板書のまとめ

黒板に残すこと

  • 3つの合図お金・急いで・秘密に
  • いったん切るいつもの番号にかけ直す
  • 合言葉家族だけが知っていること
  • 大人に相談家の人・先生・#9110

声は本人の証拠にならない。合図があったら、自分から確かめにいく。

場面カードの確かめ方の目安

答えが一致したかより、合図に気づけたか、自分から確かめる行動を選べたかを見ます。

  • A 知らない番号・お母さんの声 合図3つ お金・急いで・秘密に。いったん切り、お母さんのいつもの番号にかけ直す。つながらなければ、ほかの家族や近くの大人に相談する。駅には行かない。
  • B 新しいアカウントのボイスメッセージ・お兄さんの声 合図3つ ギフトカードの番号を送らせるのは、お金を取り戻しにくい支払い方。元のアカウントやいつもの電話番号で本人に確かめる。番号は送らない。
  • C 知らない番号・おじいちゃんの声 合図2つ お金・急いで(「お母さんには心配かけたくない」は秘密の合図にも近い)。切って、おじいちゃんの家やいつもの番号にかけ直し、家の人に伝える。
  • D いつもの番号・お父さん 合図なし 登録してある番号から、お金の話もない。ふだんどおりでよい。全部を疑う必要はないことを確かめる。
  • E 知らない番号・先生を名乗る声 合図2つ 急いで・秘密に。求めているのはお金ではなく顔写真と住所。学校の代表番号にかけ直すか、家の人に相談する。写真や住所は送らない。

詳しい情報

発問と想定される反応
発問想定される反応つなぎ方
本当にお母さんだと、何で分かる?声で分かる。話し方のくせで分かる。AIは声や話し方もまねできる。聞き分けより、自分からかけ直す方が確か。
なぜ「秘密に」と言うのだろう?ほかの家族に確かめられると困るから。確かめさせないための言葉だと気づかせる。秘密にと言われたら、むしろ相談する。
本当に困っている家族だったら、切ったら悪い?かわいそう。怒られそう。本物なら、かけ直せばすぐ話せる。確かめるのは家族を守るため、と家族で話しておく。
Dも疑った方がいい?念のため全部かけ直す。合図がなければふだんどおりでよい。合図があったときに確かめる。
困ったときの対応
  • 家族が詐欺の被害にあった経験が語られる:全体の場では深追いせず、「だまされた人が悪いのではない」と伝える。授業後に個別に話を聞く。
  • 「お年寄りがだまされるだけ」という発言:声のなりすましは年齢に関係なく、中高生にかかってくる場面(カードA・B・E)もあることを示す。
  • 「AIで声を作ってみたい」と言われる:人の声を本人の同意なく使うことはしない。授業では作らないと伝える。
  • 「自分の声の動画を消した方がいい?」と不安が出る:投稿の公開範囲を見直す方法はあるが、まず大事なのは家族で確かめ方を決めておくこと、と伝えて不安をあおらない。
  • 時間が足りない:班活動をA・D・Eの3枚に絞る。
配慮すること(家庭の状況・合言葉)
  • 家族の形はさまざまです。「家族」を「家の人や身近な大人」と言いかえてかまいません。
  • 合言葉そのものは、ワークシートに書かせず、発表もさせません。ワークシート2は「確かめ方」と「合言葉の決め方」だけを書く欄です。
  • 家の人に連絡がつかない生徒もいます。相談先として、先生、警察相談専用電話(#9110)、消費者ホットライン(188)を示します。
  • 実際の詐欺の音声やAIで作った音声は流しません。怖さで印象づけるより、確かめる手順を身につけることを目標にします。
評価の観点
観点十分満足おおむね満足
知識・技能AIで声がまねできることと、声が本人の証拠にならない理由を説明できる。AIで声がまねできることを説明できる。
思考・判断・表現合図の数や求められている物(お金・写真・番号)に合わせて、確かめ方を選べる。合図がない場面はふだんどおりと判断できる。3つの合図のうち一つ以上に気づき、確かめる行動を書ける。
主体的に学習に取り組む態度家族と決めておきたい確かめ方を、具体的に書ける。かけ直す・相談するなどの行動を書ける。

共通の評価ルーブリックも使えます。

この教材の画像について

場面のイラストは、すべて生成AIで作った架空のものです。場面カードの人物・電話番号・アカウントも架空です。この教材では、実際の音声やAIで作った音声は使いません。

個人情報・著作権・年齢条件の注意
  • 個人情報と声:生徒や教職員、実在の人物の声・写真・名前を教材に使わない。授業でAIの音声合成を試したり、生徒の声を録音したりしない。
  • 著作権:報道の映像や音声を補足に使う場合は、授業の過程での利用(著作権法第35条)の範囲で投影にとどめ、配布資料や学校のWebページには載せない。
  • 年齢条件:この授業では生徒は生成AIを使いません。生成AIサービスには年齢制限や保護者の同意が必要なものがあるため、使う場合は最新の利用規約を確認します(文部科学省ガイドラインVer.2.0)。
  • 事実確認:実際の事件を例に加える場合は、授業の直前に公的機関や報道機関の情報で確かめた例を使う。
保護者・管理職への説明

生徒が生成AIを使う授業ではなく、架空の場面カードを使って、家族を名乗る電話やメッセージを確かめる手順を学ぶ授業です。ご家庭では、ワークシートの「家族と決めておきたい確かめ方」を話題にし、合言葉や、かけ直す番号を一緒に決めていただくようお願いします。説明資料の例は学校で生成AIを扱う前ににあります。

根拠と参照資料

文部科学省ガイドラインのBox-2が示す「情報には誤ったものや危険なものがあることを考えさせる学習活動」と、情報モラルに含まれる「犯罪被害を含む危険の回避」を授業の軸にしています。かけ直して確かめる手順は、警察庁の特殊詐欺対策ページの記載に沿っています。

AIの声のなりすましについて、国内の公的機関が対策をまとめた資料は確認できませんでした(2026-10-02時点)。そのため、国内の特殊詐欺の対策(かけ直して確かめる)と、海外の公的機関の注意喚起を組み合わせています。法律や制度の説明は各資料の記載に沿って要約したものです。

版と利用条件

画像:場面のイラストは、生成AIで作った架空のものです。場面カードの人物・電話番号・アカウントも架空です。

教材版:1.0(ATM-JH-VCS)/更新日:2026-10-02/参照資料の確認日:2026-10-02。

CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳しくは利用条件をご覧ください。