
この授業でできるようになること
- AIの答えは、途中式まで自然でもまちがうことがあると分かる。
- 見積もり・検算・別のとき方で答えを確かめ、まちがいの場所を説明できる。
- AIの答えを使う前に、自分で確かめようとする。
準備
端末と生成AIサービスは使いません。
授業の流れ(45分)
- 0–5分
導入:AIの答え、そのまま写す?
挙手で「写す・確かめる・場合による」を選ばせ、理由を2〜3人に聞く。正解は決めない。
今日は、AIの答えが正しいかを自分で確かめる方法を練習します。
- 5–10分
途中式まで、もっともらしい
カードAの答えを読み上げ、「おかしいと思う人?」と聞く。気づいた生徒がいても答えは言わせず、三つの確かめ方(見積もり・検算・別のとき方)を示す。
式がきれいに並んでいると、正しく見えますね。でも見た目では決められません。
- 10–27分
活動1:カードA〜Dを調べる
4人組でワークシート1に取り組む。1枚4分を目安に、正しいかまちがいかを丸で囲み、まちがいの場所と正しい答え、使った確かめ方を書く。早い班には「まちがいの型に名前をつけて」と伝える。
電卓で同じ式を打つだけだと、AIと同じまちがいをします。式そのものを疑いましょう。
- 27–35分
答え合わせ:まちがいの三つの型
班ごとに1枚ずつ発表させ、表で答えを確かめる。Bは正しいことを確認し、「確かめたから正しいと言える」ことを押さえる。単位・途中の計算・条件の三つの型を板書する。
Bを『まちがい』にした班もありました。疑うのはよいこと。でも、最後は確かめた結果で決めます。
- 35–41分
活動2:カードEを1人で確かめる
ワークシート2に、正しい答えと、使った確かめ方を書く。2分たったら隣の人と見せ合う。
- 41–45分
振り返り:今日からの約束
「AIの答えを使う前に、わたしは__で確かめる」を書き、2〜3人が発表する。
板書のまとめ
黒板に残すこと
- 見積もりだいたいの大きさは合う?(A)
- 検算答えを問題にもどす(C・D)
- 別のとき方ちがう方法でも同じ?(B)
まちがいの型:単位/途中の計算/条件の読み落とし。AIの答えは下書き、確かめるのは自分。
カードの答えと解説
カードの問題とAIの答えはすべて架空です。正しい答えは次のとおりです(授業者が計算して確かめ済み)。
| カード | 答え | まちがいの場所 | 見つけ方の例 |
|---|---|---|---|
| A | AI:1.5分 正:15分 | 単位の取り違え。1.2km=1200m(120mではない) | 見積もり:1分で80m進むなら、1.5分では120mしか進まない。1.2kmなら10分以上かかるはず |
| B | AI:1800円 正:1800円(正しい) | まちがいなし | 別のとき方:25%=4分の1。2400÷4=600、2400−600=1800で同じ答え |
| C | AI:x=−8 正:x=8 | 途中の計算ミス。最後の行で −16÷(−2)=8 を −8 にした | 検算:x=−8を代入すると左辺−17、右辺−49で等しくない。x=8なら両辺とも31 |
| D | AI:2台 正:3台 | 条件の読み落とし。「全員が乗る」なので、余りの10人のためにもう1台いる | 検算:25×2=50人。60人は乗れない |
カードごとの補足
- A(速さ):正しくは 1200÷80=15 で 15分。AIは「1.2km=120m」と単位を取り違えた。式の形(道のり÷速さ)は正しいので、見た目では気づきにくい。
- B(割合):2400×0.75=1800円で正しい。25%引きを「定価−定価の25%」と考えても 2400−600=1800 で一致する。「AIの答えは全部まちがい」と思いこませないためのカード。
- C(一次方程式):3x−5x=−9−7 → −2x=−16 までは正しい。最後に両辺を−2でわるとき、−16÷(−2)=8。代入すると、3×8+7=31、5×8−9=31 で等しい。AIの x=−8 を代入すると、左辺 3×(−8)+7=−17、右辺 5×(−8)−9=−49 で等しくならない。
- D(わり算と余り):60÷25=2 余り10。余りの10人も乗るので3台。「全員が乗る」という条件を読み落とし、四捨五入した。25×2=50 で、60人は乗れないと分かる。
- E(活動2):600+540=1140円。AIは最後のたし算をまちがえた。見積もり(600+500=1100 より大きいはず)で、1040円は小さすぎると気づける。
発問と予想される反応
- 「電卓で同じ式を打ったら1.5になった。だから正しい」:電卓は打った式を計算するだけ。「120m」が正しいかを確かめていないことに気づかせる。
- 「Cはx=−8を代入するのが面倒」:左辺だけでも計算させる。−17 と出れば、右辺の 5x−9 が−17になるかを考えさせる。
- 「Dは2.4台だから、3台は多すぎる」:「2台に決めたら、だれが乗れない?」と問い返す。
小学6年で行うとき:カードCを次の問題に置きかえます。「□×4−6=30 の□を求めなさい」。AIの答え:「□×4=30−6=24、□=6」。正しくは □×4=30+6=36、□=9(9×4−6=30)。AIの□=6を戻すと 6×4−6=18 で30にならない、という検算で見つけられます。
詳しい情報
困ったときの対応
- 計算が苦手で手が止まる生徒:まず見積もりだけを一緒に行う。「1.5分で1.2kmも歩ける?」のように、答えの大きさを生活の感覚で確かめさせる。
- 早く終わる班:「AIがまちがえた理由を、AIになったつもりで説明して」と頼む。単位・途中の計算・条件の型に分ける。
- 「AIはもう計算をまちがえない」という声:計算の道具とつながったAIもあり、精度は上がっている。それでも問題文の読み取りや単位のまちがいは起こりうるので、確かめる習慣はどの道具でも同じだと伝える。
- 宿題でAIを使ってよいかの質問:学校・学年のルールに従う。宿題とAIの線引きの教材も使える。
評価の観点
| 観点 | 十分満足 | おおむね満足 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 4枚すべてで正しい答えを求め、まちがいの場所を式の行で示せる。 | 3枚以上で正しい答えを求められる。 |
| 思考・判断・表現 | カードに合った確かめ方を選び、その結果からまちがいを説明している。 | 三つの確かめ方のうち一つ以上を使っている。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | AIの答えを使う前に確かめる方法を、自分の学習の場面に合わせて書いている。 | AIの答えをそのまま使わず確かめると書いている。 |
共通の評価ルーブリックも使えます。
この教材の画像とAI解答について
カードA〜Eの「AIの答え」は、授業のために作った架空のものです。実在するAIサービスの出力ではありません。誤りの種類(単位・途中の計算・条件)が一つずつ分かるように、意図して誤りを入れています。場面のイラストは生成AIで作った架空のものです。
実際のAIで試したいとき
生徒に操作させる場合は、学校で認められたサービスと年齢条件を確認してから行います。同じ問題でも、AIの答えは毎回同じとは限らず、正しく答えることも多くあります。「まちがいを出させる」ことを目的にせず、「出た答えを三つの方法で確かめる」練習として使ってください。個人名やテストの問題そのものは入力しません。
個人情報・著作権・年齢条件の注意
- 個人情報:生徒の名前や成績を生成AIに入力しない。
- 著作権:教科書・問題集の問題文をそのまま入力・配布するときは、著作権と各社の利用条件を確認する。
- 年齢条件:主要な生成AIサービスには年齢条件や保護者の同意の条件がある。授業の直前に最新の利用規約と学校の方針を確認する。
保護者・管理職への説明
この授業は端末や生成AIサービスを使わず、架空のAI解答カードで行います。AIを使うことを禁じる授業ではなく、AIの答えを使う前に自分で確かめる力を育てる授業です。ご家庭でAIを使って学習するときも、「どうやって確かめた?」と声をかけていただくようお願いします。
根拠と参照資料
文部科学省のガイドラインは、生成AIの性質上、誤った出力(ハルシネーション)を完全に防ぐことは極めて難しいとし、利活用の例として、生成AIが生成する誤りを含む出力を教材に、その性質や限界に気付く学習を挙げています。本教材は、算数・数学の見積もり・検算の学習と結びつけて、この考え方を端末なしで扱います。
- 文部科学省:初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0、令和6年12月26日)(2026-10-02確認)
- 文部科学省:生成AIの利用にあたって(学校現場における生成AIの利用について)(2026-10-02確認)
- 文部科学省:中学校学習指導要領(平成29年告示):数学 第1学年「一元一次方程式を具体的な場面で活用すること」。同じPDFに収録の小学校学習指導要領 算数 第4学年「目的に応じて四則計算の結果の見積りをすること」(2026-10-02確認)
版と利用条件
画像:場面のイラストは、生成AIで作った架空のものです。AIの答えのカードも架空です。
教材版:1.0(ATM-JH-MATH)/公開日:2026-10-02/一次資料の確認日:2026-10-02。
CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳しくは利用条件をご覧ください。