この授業で目指すこと
対象:高校1–3年/教科:公共、総合的な探究の時間(キャリア教育)、情報/所要時間:50分(1単位時間)
- 仕事を「職業名」ではなく、いくつもの「タスク(作業)」の集まりとして分けて考えられる。
- タスクごとに「AIに任せやすい」「人とAIで組む」「人が担う」を、条件と理由を添えて分類できる。
- 将来の予言ではなく、変化の中で自分が伸ばしたい力を具体的な言葉で表せる。
準備物と端末・AIサービス
| 項目 | この授業での扱い |
|---|---|
| 生徒の端末 | 不要。発展課題で使う場合のみ班に1台。 |
| AIサービス | 使いません。教師が実演する場合も、学校が利用を認めたサービスで、氏名や学校名を入力しない固定の例にします。 |
| 発展(任意) | 厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で、関心のある実在の職業のタスク一覧を調べ、授業の分類と比べる。 |
50分の進め方
- 導入:問いを立てる
「AIでなくなる仕事は何だと思う?」と問い、挙手と一言で意見を集める。出た職業名を板書に残す。
- 視点を変える:仕事はタスクの集まり
「先生の仕事」を例に、授業・テスト作成・採点・面談・行事準備・連絡などに分解する。職業ごとではなくタスクごとに変化を考えると説明する。
- 班活動①:タスクを3つに分ける
班で架空の職場カードを1つ選び、6つのタスクを「AIに任せやすい/人とAIで組む/人が担う」に分け、理由を書く。分類の手がかり(スライド5)を掲示しておく。
- 班活動②:5年後の1日を書き直す
分類をもとに、この仕事の1日で「減る作業」「増える作業」「新しく必要になる力」を書く。
- 共有:分類が割れたタスクを検討
各班1分で発表。班によって分類が違ったタスクを取り上げ、条件(相手、規模、失敗したときの影響)で答えが変わることを確認する。
- 振り返り:出口チケット
「変わる仕事の中で、私が伸ばしたい力は__。理由は__」を書く。
分類の手がかり
| 分類 | 手がかりになる問い | 例(架空の職場カードから) |
|---|---|---|
| AIに任せやすい | 手順が決まっているか。量が多いか。間違いを人が確かめやすいか。 | 売上の集計、予約データの入力 |
| 人とAIで組む | AIが下書きや候補を出し、人が選び・直し・決める形にできるか。 | パンフレットの文章、仕入れ量の予測 |
| 人が担う | 相手の気持ちや信頼が大切か。その場で判断し、結果に責任を持つ人が必要か。 | 苦情への対応、価格の話し合い |
例は一つの考え方です。同じタスクでも、条件によって分類は変わります。
教師の発問と想定される反応
| 発問 | 想定される反応 | 返し方の例 |
|---|---|---|
| AIでなくなる仕事は何だと思う? | レジ、受付、翻訳、運転、事務など職業名が挙がる。 | 「その仕事の中身を全部言える?」と問い、タスクに分ける活動へつなぐ。 |
| このタスクを「AIに任せやすい」にした理由は? | 繰り返しだから。データがあるから。 | 「AIが間違えたら、誰がどうやって気づける?」と確認の仕組みまで考えさせる。 |
| 「人が担う」にした理由は? | 気持ちが分かるから。責任があるから。 | 「今のAIが苦手だから」と「AIが上手になっても人が担うべきだから」を分けて書かせる。 |
| 班で分類が割れたのはどこ? | 苦情対応、仕入れの予測、利用者の相談など。 | 正解を一つに決めず、「どんな条件なら分類が変わるか」を言葉にさせる。 |
| 5年後、この仕事の人は何に時間を使う? | 相談や企画が増える。AIの出力を確かめる作業が増える。 | 「増えた作業に必要な力は何か」を出口チケットにつなげる。 |
職場カードの分類例(教師用)
正解ではなく、議論を整理するための一例です。
- 図書館司書:貸出・返却の受付、新しい本の登録はAIや機械に任せやすい。図書館だよりの文章は人とAIで組める。調べ物の相談、おはなし会、地域資料の保存は人が担う部分が大きい(ただし資料の整理の一部はAIと組める)。
- 旅行会社の窓口担当:空き状況の確認、予約データの入力は任せやすい。見積もりとパンフレットは人とAIで組める。家族連れの要望の聞き取りとトラブル対応は人が担う部分が大きい。
- 直売所の店長:売上の集計は任せやすい。仕入れ量の予測とポップ作成は人とAIで組める。農家との価格の話し合い、苦情対応、新商品の企画は人が担う部分が大きい。
困ったときの対応
- 「全部AIになる」「将来が不安」と悲観的な発言が出たとき:不安を否定せず受け止めたうえで、この授業は予言ではなく「条件を考える」授業だと戻る。強い不安を示す生徒には授業後に個別に声をかける。
- 「○割の仕事が消えるとニュースで見た」と数値が出たとき:出典、調査の時期、「仕事が消える」の定義を確認する問いを返す。授業内では数値の真偽を判定しない。
- 家族の職業に話が及んだとき:家族の職業や収入を発表させない。架空の職場カードで考えることを徹底する。
- 分類が早く終わった班:別のカードで同じ作業をする。端末がある場合は、job tagで関心のある職業のタスクを調べ、授業の分類と比べる。
- 話し合いが進まない班:付箋にタスクを1枚ずつ書き、3つの枠に置くことから始める。理由は「繰り返し?」「相手の気持ち?」「責任は誰?」の3問だけで考えてよいとする。
評価の観点
| 観点 | 見取る場面 | 十分に達成している姿 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | ワークシート2 | 6つのタスクを分類し、それぞれに理由を書いている。 |
| 思考・判断・表現 | ワークシート3・4、共有 | 分類が条件によって変わることを、具体的な条件を挙げて説明している。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 出口チケット | 伸ばしたい力を、授業で考えたタスクの変化と結びつけて書いている。 |
将来予測が当たっているかではなく、分ける・理由を述べる・条件を考える過程を評価します。共通評価ルーブリックも使えます。
個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意
- 個人情報:家族の職業や収入、アルバイト先などを書かせたり発表させたりしません。事例はすべて架空です。
- 著作権:job tagなどのWebサイトの情報を使う場合は、サイトの利用条件に従い、出典(サイト名・URL・確認日)を書きます。
- 年齢条件:生成AIサービスには、利用できる年齢の下限や、未成年の利用に保護者の同意を求める条件を定めているものがあります。条件はサービスごとに異なり、変更されることもあるため、授業で使う場合は、学校(教育委員会)が利用を認めたサービスの最新の利用規約を授業前に確認し、必要に応じて事前に保護者の理解を得ます。この授業は、生徒がAIサービスを使わなくても実施できます。
- 事実確認:報道などで見る「将来なくなる仕事」の数値は、調査の前提や定義によって変わります。使う場合は一次資料と発表時期を確かめます。
保護者・管理職への説明
進路に関わる話題のため、不安をあおらない設計にしています。特定の職業の将来を予言せず、仕事をタスクに分けて考える手順を学ぶ授業であること、生徒はAIサービスを使わずに実施できること、家庭の職業を扱わないことを伝えてください。
根拠と参照資料
- 内閣府:人間中心のAI社会原則(平成31年3月29日 統合イノベーション戦略推進会議決定)(2026-10-01確認)
- 文部科学省:生成AIの利用について(初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0、令和6年12月26日)(2026-10-01確認)
- 厚生労働省:「job tag(職業情報提供サイト)」をリニューアルしました(職業をタスク・スキルの観点から調べられるサイト。job tag)(2026-10-01確認)
一次資料は確認日時点の内容です。改訂されることがあるため、授業前に最新版を確認してください。教材内の事例・人物・団体・数値はすべて架空です。
版と利用条件
CC BY-NC 4.0。出典表示のうえ非営利目的で改変できます。教材の版:1.0(更新日:2026-10-01)。
AI授業の準備室 / ATM-HS-WORK / 版 1.0 / 2026-10-01 / CC BY-NC 4.0