小学校5・6年 / 総合・情報モラル / 45分

その写真、本物?

AIで本物そっくりの画像が作れる時代。見た目だけで決めず、「だれが・いつ・ほかでも」を確かめ、広める前に立ち止まる習慣をつくります。端末なしで実施できます。

授業時間
45分
人数
4人組
端末・AI
使わない
更新日
2026-10-01

この授業で目指すこと

対象:小学校5・6年 教科等:総合的な学習の時間、学級活動、特別の教科 道徳などの情報モラルの時間 時間:45分

  • AIを使うと、本物の写真のように見える画像を作れることを知り、見た目だけでは本物かどうかを決められないことに気づく。
  • 画像を見たときに「だれが出したか」「いつのものか」「ほかの信頼できるところでも伝えているか」を確かめようとする。
  • 確かめられない画像は広めない、人の写真を勝手に加工・送信しないなど、自分の行動を決める。
授業者へ:この授業は「AI画像を見分けるコツ」を教える授業ではありません。指の数や文字のゆがみなど見た目の手がかりは、技術が進むほど当てにならなくなります。見分けることより、出どころを確かめ、広める前に立ち止まることを中心にします。

準備するもの

端末:不要です。AIサービス:使いません。

実際のAI画像を見せたい場合は、児童にサービスを操作させず、教師が学校で認められたサービスで事前に作った架空の風景や動物の画像だけを使い、「AIで作った画像です」と明示して見せてください。実在の人物、児童・教職員の顔、学校が分かる写真、既存のキャラクターを入力・生成に使わないでください。インターネット上で実際に出回った偽画像は、内容が記憶に残り、かえって広める結果になるおそれがあるため、この教材では扱いません。

45分の進め方

  1. 導入:見たら信じる?

    スライド1・2。「写真は、本当にあったことを写している?」と問い、挙手で予想を集める。正解を決めず、「今日は確かめ方を考える」と伝える。

  2. ミニ解説:AIは「ことば」から画像を作れる

    スライド3・4。「夕やけの海でイルカがジャンプする写真」のように文章でたのむと、本物の写真のような画像ができることがあると説明する。見た目のおかしなところで見分ける方法は、AIが上手になると使えなくなることも伝える。

  3. 活動1:画像カードを調べよう

    スライド5。4人組でカードA〜Dを読み、ワークシート1に「信じてよさそう?(◎○△)」と、その理由・確かめる方法を書く。1枚3分を目安に、最後の3分で班の意見をそろえる。

  4. 共有:確かめる三つの手がかり

    スライド6・7。班の考えを発表させ、「だれが出した?」「いつのもの?」「ほかの信頼できるところでも?」の三つに整理して板書する。確かめられないときは「広めない」「家の人や先生に聞く」ことを確認する。

  5. 活動2:こんなとき、どうする?

    スライド8。「友達の写真をAIでへんな顔にして、クラスのグループに送ろう」とさそわれた場面を考え、ワークシート3に自分の行動と理由を書く。

  6. 振り返り:今日からの約束

    スライド9。「写真や動画を見たとき、わたしは___する」をワークシート4に書き、2〜3人に発表してもらう。

教師の発問と想定される反応

発問想定される反応つなぎ方
写真は、本当にあったことを写している?写真だから本当/加工アプリで変えられる。加工だけでなく、AIでは何もないところから写真のような画像を作れる。
カードAのワニの写真、信じる?町にワニはいない/本当かもしれない。内容より先に「だれが撮ったのか」を見る。「すぐ広めて」は立ち止まる合図。
カードBは本物の写真ではないけれど、だましている?「イメージ図」と書いてあるからだましていない。作り物でも、作り物だと説明していれば問題は小さい。困るのは本物だと思わせること。
どうしたらAIで作った画像だと分かる?指の数がへん/文字がくずれている。前は手がかりになったが、今は見た目だけでは分からないことが多い。だから出どころを確かめる。
友達の写真をAIで加工して送るのは?おもしろいからいい/本人がいやがる。本人がいやな気持ちになれば、いじめにつながる。一度送った画像は、すべて消すことができない。

カードの答えと解説

「◎○△」に一つの正解はありません。理由と確かめ方が書けているかを見ます。目安は次のとおりです。

  • A:大雨の日に駅前をワニが泳ぐ写真(△) だれが撮ったか分からず、「すぐ広めて」とあわてさせる言葉がある。市役所や気象の情報、新聞・テレビのニュースなど、だれが出したか分かるところで同じことを伝えているかを確かめる。確かめられなければ広めない。
  • B:市のホームページの「新しい図書館の完成予想図」(○) 市が出していて「イメージ図」と説明している。本物の写真ではないが、だます目的ではない。できあがったら実物と比べられる。
  • C:有名な歌手が近くの公園にいる写真(△) 知らない人の投稿で、日付もない。本人や所属先の発表で確かめられなければ広めない。実在の人を写したように作った画像は、その人を傷つけることもある。
  • D:「AIで作りました」と書かれた空飛ぶクジラの絵(◎/○) 作った人がAIで作ったと説明しており、作品として楽しめる。ただし、本当の出来事のように説明を変えて広めない。

活動2の考え方:断る、送らない、さそわれたことを先生や家の人に伝える、などが書けていれば十分です。「本人がいいと言ったら?」という質問が出たら、「本人がいいと言っても、グループの外へ広がることがある」と返します。

困ったときの対応

  • 実際に見た偽画像やSNSの話を詳しく話し始めたとき:アカウント名や人の名前は出さずに、「どんな手がかりで気づいた?」と確かめ方に話を戻します。
  • 「じゃあ全部うそ?何も信じられない」という声:学校のお便りや市のホームページのように、だれが出したか分かる情報は確かめやすいことを示し、「確かめ方を知っていれば大丈夫」と伝えます。
  • SNSを使っていない児童が多いとき:家族のスマートフォンに届いたメッセージ、動画サイト、学校のお便りなど、身近な場面に置きかえます。
  • 自分の写真を加工された・送られたという話が出たとき:全体では深く聞かず、授業後に個別に話を聞き、学校の相談体制(学年・管理職・養護教諭・スクールカウンセラー等)につなぎます。

評価の観点

観点十分満足おおむね満足
知識・理解AIで写真のような画像が作れることと、見た目だけで判断できない理由を説明できる。AIで本物のような画像が作れることを知っている。
思考・判断カードごとに、出どころ・日付・ほかの情報との比べ方を具体的に挙げている。三つの手がかりのうち一つ以上を使って判断している。
態度確かめられない画像を広めない理由と、人の写真を加工・送信しない理由を、自分の行動として書いている。確かめられない画像は広めないと書いている。

手が止まっている児童には、カードAに戻り「だれが撮った?」の一点だけを一緒に確かめます。共通評価ルーブリックも参照できます。

個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意

  • 個人情報・肖像:児童や教職員の顔写真、学校が分かる写真を生成AIに入力したり、加工したりしません。総務省「インターネットトラブル事例集(2026年版)」は、生成AIによる画像被害を特集しています。
  • 著作権:授業で見せる画像を教師が作る場合も、既存のキャラクターや作品に似せたものは作らず、作った画像を授業の外で公開する前には既存の作品と似ていないか確認します(文化庁「AIと著作権について」)。
  • 年齢条件:主要な生成AIサービスは、小学生が自分のアカウントで単独に使うことを想定していません。OpenAIの利用規約は13歳以上(18歳未満は保護者の許可が必要)、MicrosoftのCopilot利用規約は少なくとも13歳以上としています。GoogleのGeminiアプリは、13歳未満の場合、保護者がファミリーリンクで管理するアカウントでアクセスを有効にする必要があります。条件は変わるため、授業の直前に最新の利用規約を確認し、学校設置者の方針と保護者の理解を前提にしてください(2026-10-01確認)。
  • 事実確認:「AIで作られたかどうかを判定する」とうたう道具の結果も、それだけで本物・偽物を決めません。出どころ・日付・複数の情報との比較を組み合わせます。

保護者・管理職への説明

この授業は、端末や生成AIサービスを使わず、文章で書いた架空の「画像カード」で実施します。実在の偽画像や児童の写真は使いません。ご家庭では、「広める前に、だれが出した情報かを見る」「家族や友達の写真を加工・公開する前に本人に聞く」ことを話題にしていただくようお願いします。

根拠と参照資料

文部科学省ガイドラインは、情報モラル教育の一層の充実の中で、偽情報への指摘を踏まえ、情報の発信者・発信時期・内容・他の情報との比較を組み合わせて信ぴょう性を確かめること(ファクトチェック)を発達の段階に応じて学ぶことを求めています。また、小学校段階の児童が生成AIを直接使うことには、より慎重な見極めが必要としています。本教材はこの考え方に沿って、端末を使わない形で設計しました。

版と利用条件

教材版:1.0(ATM-ELEM-101)/更新日:2026-10-01/一次資料の確認日:2026-10-01。

CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。学校や地域の方針に合わせて、発問や例を変えて使ってください。